【老子道徳経 第十七章】 理想の君主
【今日のこよみ】 旧暦2013年10月16日先勝 五黄土星
戊子 日/癸亥 月/癸巳 年 月相 14(満月)
立冬 末候 金盞香(きんせんかさく)
太上下知有之。
其次親而譽之。其次畏之。其次侮之。
信不足、焉有不信。
悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然。
【書き下し文】
太上(たいじょう)は下(しも)これ有るを知るのみ。
その次は親しみてこれを譽(ほ)む。その次はこれを畏(おそ)る。その次はこれを侮る。
信足らざれば、焉(すなわ)ち信ざられざること有り。
悠(ゆう)としてそれ言を貴(おも)くすれば、功は成り事は遂(と)げられて、百姓(ひゃくせい)は皆我自ら然(な)りと謂(い)う。
【私的解釈】
最も理想的な君主は、民衆がただ存在を知るのみで、実際何をしているのか分からないけど尊敬される君主である。
次に良い君主は、民衆に身近な存在でその功績が称えられる君主である。その次に良い君主は、民衆を法と罰で縛り、恐れられる君主である。その次に良い君主は、民衆に馬鹿にされる君主である。
君主が誠実さを欠くと民衆から信頼されることは無い。
だから、理想の君主はただ悠然としており、自分の「おもゐ」が自然と形作られて国家が発展していく。そして、民衆が頑張ったからこそ、この発展を享受できているのだと誇る活気がその国に溢れているものだ。
【雑感】
この章を読んで日本について考えてみた。
万葉集にこのような和歌がある。
葦原(あしはら)の 瑞穂(みずほ)の国を 天(あま)くだり
しらしめしける 天皇(すめろき)の
神の命(みこと)の 御代(みよ)かさね……
敷きませる 四方(よも)の国には
山川を 広み淳(あつ)みと
奉る 御調宝(みつきたから)は
天皇たちの長い家系が 世々代々
この諸地方を治めてきた
深山がつらなり 広き川があまた流れ
数えきれぬ貢(みつ)ぎ物(もの) 尽きせぬ宝を
産みなすこの国を
この歌は今から1000年以上前に詠まれた和歌である。
当時から1000年経った現代、天皇は日本の象徴とされているが、このことでこの和歌に流れる情景が様変わりすることもなく、さらに深みを帯びて私たちのおもゐに訴えかけてくる。
君主という言葉の定義は別として、老子が2600年前に記した理想が、今この日本で実現されているのだと感じざるを得ない。
2018年(2678年)9月10日まで あと、1758日