【老子道徳経 第十五章 】 おもゐを引き継ぐ資格
【今日のこよみ】 旧暦2013年10月14日大安 五黄土星
丙戌 日/癸亥 月/癸巳 年 月相 12
立冬 次候 地始凍(ちはじめてこおる)
【今日の気象】 天気 晴れ 気温 8.7℃ 湿度 88%
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古之善爲道者、微妙玄通、深不可識。
夫唯不可識。故強爲之容。
與兮若冬渉川、猶兮若畏四隣、儼兮其若客、渙兮若冰之將釋、敦兮其若樸、曠兮其若谷、混兮其若濁。
孰能濁以靜之徐清。
孰能安以動之徐生。
保此道者、不欲盈。
夫唯欲不盈、故能蔽而新成。
【書き下し文】
古(いにしえ)の善く道を為す者は、微妙玄通(げんつう)、深くして識(し)るべからず。
それ唯(た)だ識るべからず。故(ゆえ)に強いてこれが容(よう)を為さん。
予(よ)として冬に川を渉(わた)るが若(ごと)く、猶(ゆう)として四隣(しりん)を畏(おそ)るるが若く、儼(げん)としてそれ客の若く、渙(かん)として冰(こおり)の将(まさ)に釈(と)けんとするが若く、敦(とん)としてそれ樸(ぼく)の若く、曠(こう)としてそれ谷の若く、混(こん)としてそれ濁(にご)れるが若し。
孰(たれ)か能(よ)く濁りて以(も)ってこれを静かにして徐(おもむろ)に清(す)まん。
孰か能く安らかにして以ってこれを動かして徐に生ぜん。
この道を保つ者は、盈(み)つるを欲せず。
それ唯だ盈つるを欲せず、故に能く敝(やぶ)れて而(しか)も新たに成る。
【私的解釈】
いにしえから連綿と引き継がれている「おもゐ」というものをよく理解している者は、生きていく上での行いや選択が神妙でありかつ最善となる。これは凡人には理解できないものである。
上辺だけでは理解できないことであるので、ここではその本質を表現したいと思う。
冬に氷が張った川を渡るように慎重であり、生活するうえで四方に注意深く、客人と接するときのように身なりをいつも正しており、氷が溶けて丸くなるように素直であり、切り倒したばかりの丸太のように瑞々しく、深い谷間のように奥深く、濁った水のように混乱する「おもゐ」の調和がとれている。
あなたは、混乱する「おもゐ」の濁りが静まり、ゆっくり時間をかけて清まるまで、我慢強く待つことが出来るか?
あなたは、心を安静にすることで心を目覚めさせて「おもゐ」を湧き出さすことが出来るか?
「おもゐ」を引き継ぐ者は、自分の欲望を100%満たすようなことはしない。
ほどほどを知るから挫折して倒れても何度でも立ち上がり、再挑戦することが出来るのだ。
【雑感】
欲望を必ず満たすことが出来る立場にたつと、人はどうなるのだろうか?
子供の頃感じていた、あの万能感がふつふつとよみがえってくるのだと思う。
人間は成長していくにつれて、この万能感を何とかしないと社会生活をうまく営めないぞということを体験で学ぶ。
しかし、この万能感を制御するのはやっかいだ。
人が接する社会はひとつだけではないから。
会社の中では新入社員の最下位カーストでも、家族、兄弟、友達、恋人との関係でこの万能感を存分に発揮できる場所が出来うる。
この万能感は、陽なるチカラと陰なるチカラを発揮する。陰なるチカラを抑え込んでうまく制御すれば、この万能感は世の中に建設的なチカラとなる。だが、歴史を振り返って独裁者が歩いた道のりをたどると、万能感が膨張し続ける中で、この陰なるチカラを抑え続けておくことの可能性には悲観的にならざるを得ない。
老子は、だから際限なく欲望を満たすようなコトをするなよ。ひとつ欲望を満たすということは、自滅の門が近づいたことになるんだから、と言っている。
自滅さえしなければ、やり直しが何回でも効くのが人生なんだから、とも。