【老子道徳経 第三十九章】 「はじめ」なるもの
【今日のこよみ】 旧暦2014年 3月 1日 先負 四緑木星
辛丑 日/戊辰 月/甲午 年 月相 0.3 朔
春分 末候 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
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昔之得一者。
天得一以清、地得一以寧、神得一以靈、谷得一以盈、萬物得一以生、侯王得一以爲天下貞。
其致之一也。
天無以清、將恐裂。地無以寧、將恐廢。
神無以靈、將恐歇。谷無以盈、將恐竭。萬物無以生、將恐滅。侯王無以貞、將恐蹷。
故貴以賤爲本、髙以下爲基。是以侯王自謂孤寡不轂。
此非以賤爲本耶、非乎。
故致數譽無譽。不欲琭琭如玉、珞珞如石。
【書き下し文】
昔の一(いつ)を得る者。
天は一を得て以(も)って清く、地は一を得て以って寧(やす)く、神は一を得て以って霊に、谷は一を得て以って盈(み)ち、万物は一を得て以って生じ、侯王(こうおう)は一を得て以って天下の貞(てい)と為(な)る。
そのこれを致すは一なり。
天は以って清きこと無くんば、将(は)た恐らくは裂けん。地は以って寧きこと無くんば、将(は)た恐らくは発(くず)れん。神は以って霊なること無くんば、将(は)た恐らくは歇(や)まん。谷は以って盈つること無くんば、将(は)た恐らくは竭(つ)きん。万物は以って生ずること無くんば、将(は)た恐らくは滅びん。侯王は以って貞なること無くんば、将(は)た恐らくは蹶(たお)れん。
故に貴(たっと)きは賤(いや)しきを以って本(もと)と為し、高きは下(ひく)きを以って基(もとい)と為す。ここを以って侯王は自ら孤(こ)・寡(か)・不穀(ふこく)と謂(い)う。これ賤しきを以って本となすに非(あら)ざるや、非ざるか。
故に誉(よ)を数うるを致せば誉(ほまれ)なし。琭琭(ろくろく)として玉の如(ごと)く、珞珞(らくらく)として石の如きを欲せず。
【私的解釈】
いにしえの「はじめ」を授かったモノたち。
天は「はじめ」を授かることで澄み渡り、大地は「はじめ」を授かることで静まり、神々は「はじめ」を授かることで下界に宿り、峡谷は「はじめ」を授かることで清流となり、万物は「はじめ」を授かることで世の中に産まれ落ち、王は「はじめ」を授かることで神意が降り、世の中を統治する資格を得た。
すべては「はじめ」の恩恵。
天がこの「はじめ」により澄み渡ることがなければ、すでに裂けているだろう。大地がこの「はじめ」により落ち着くことがなければ、すでに崩れ落ちているだろう。神々がこの「はじめ」により下界に宿ることがなければ、すでに世の中は闇に包まれているだろう。峡谷がこの「はじめ」により清流とならなければ、すでにあらゆるものが枯れているだろう。万物がこの「はじめ」により産まれ落ちなければ、すでにこの世界は滅んでいるだろう。諸国の王にこの「はじめ」により神意が降りなければ、すでに倒されているだろう。
高貴は卑賤と両極一体を成し、高は低と両極一体を成す。だからこそ、諸国の王は、「孤高なる者」「孤独なる者」「ろくでもない者」と自称する。この事実は、高貴であるはずの王の心の中にも賤しきおもゐが同居することの証左となる。
名誉の数を積み上げると称賛は遠ざかる。玉石混淆なるモノの中から宝石だけを選り分け、これを誇示しなくても良いのだ。あなたは既に「はじめ」の恩恵を受けているのだから。
【雑感】
「はじめ」なるものは、私の中にも存在する。
そしてこの「はじめ」なるものは、私の無意識に働きかける。
だから意識がどれだけ善や悪がごちゃ混ぜでドロドロしていても構いやしないのだ。
なぜなら、私自身を「はじめ」なるものが見守ってくれているのだから。
私は私の中の「はじめ」なるものに感謝して、今を自由に生きれば良いだけ。