まどゐ。

~ おもゐを嗣ぎ、おもゐを纏ひ、おもゐを遣る ~ 

【二宮翁夜話 巻之一 四】 天理人道を論じて推譲に及ぶ

【今日のこよみ】旧暦2014年 1月 5日大安  四緑木星

         丙午 日/丁卯 月/甲午 年 月相 4.2

         立春 初候 東風解凍(はるかぜこおりをとく)

 

 【今日の気象】  天気 曇り 気温 7.2℃ 湿度 65%  

(大阪 6:00時点)     

 

翁曰く、夫れ人道は人造なり、されば自然に行はるる處の天理とは格別なり。

 
天理とは春生じ秋は枯れ、火は燥(かわ)けるに付き、水は卑しきに流る。晝(昼)夜運動して萬古易らざる是なり。人道は日々夜々人力を盡(尽)し、保護して成る。
 
故に天道の自然に任すれば、忽に廢(廃)れて行はれず。
 
故に人道は、情欲の儘(まま)にする時は、立たざるなり。
 
譬(例)へば漫漫たる海上道なきが如きも、船道を定め是によらざれば、岩にふるるなり、道路も同じく、己が思ふ儘にゆく時は突當(当)り、言語も同じく、思ふままに言葉を發する時は、忽ち争ひを生ずるなり。
 
是に仍(より)て人道は、欲を押へ情を制し、勤め勤めて成る物なり。
 
夫れ美食美服を欲するは天性の自然、是をため是を忍びて家産の分内に随はしむ。身體(体)の安逸奢侈を願ふも又同じ。
 
好む處の酒を控へ、安逸を戒しめ、欲する處の美食美服を押へ、分限の内を省いて有餘(余)を生じ、他に譲り向來(こうらい)に譲るべし。
 
是を人道といふなり。
 
 
推譲…自ら進んで他に譲ること

 

【私的解釈】
 
尊徳翁が言う。人道は人が築くものであり、自然に築かれる天理とは異なるものである。
 
天理は、春生じれば秋には枯れ落ち、火が乾いているものにつき、水は低いところに向かって流れるということ。これらの法則は、昼夜を積み重ねても大昔から変わらないものである。人道は、毎日毎日人の力を尽くして、保護してやっと立つ。
 
だから、人道は、天道の自然に任せれば、すぐに廃れて行われなくなる。
 
つまり、人道は、欲望のままに任せると立つことはないのである。
 
例えれば、広大な海上では道がないようであっても、船道を決めないで進めば、岩にぶつかるものである。道路も同じであり、自分が思うままに進めば行き止まりにぶつかり、言葉も同じであり、心に思うがままに言葉を発すれば、たちまち言い争うこととなる。
 
これらからも分かるように、人道は、欲望を抑えて感情を押しとどめて、積み重ねて積み重ねて初めて出来上がるものである。
 
贅沢な食事や衣服を欲するのは、人間として生まれたからには自然のことであるが、この欲望を抑えて収入の範囲でやり繰りする。己が仕事を怠け、浪費をしようと思ってしまうのも人間であれば自然のこと。
 
大好きなお酒を控えて、怠けようとする心を戒め、贅沢な食事や衣服に浪費する欲望を抑えて、収入の範囲で節約して余りを生じさせ、この余りを他人の為に役立たせたり、次の世代の為に役立たせるべきである。
 
これが人道というべきものである。
 
 
 
【雑感】
 
生きることに意味なんてあるのだろうか?
 
こう悩むことで、人は意味ある人生を歩んでいるんだと思う。
 
生きることに意味を求めていない人には、こんな悩みは降り懸からない。
 
悩むことができるのは、私が今、生きているからこそ。
 
今の悩みが晴れても別の悩みがやって来る。
 
沸き立つ悩みに向かい合える、平和な世の中に感謝。